転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


547 この辺のお家って普通は買えないんだってさ



 イーノックカウに着いたけど、いつもと違って今日は宿屋さんに泊まる訳じゃないでしょ?

 だから僕たちは、このまま僕が買ったお家に行く事になったんだ。

「ルディーンが買ったお家って、どこにあるの?」

「あっちの方だよ」

 キャリーナ姉ちゃんに訊かれたもんだから、僕んちのある方を指さしたんだよ。

 そしたらね、そんな僕たちを見てたお母さんがこう聞いてきたんだ。

「ルディーンが買った家っていうのは、錬金術ギルドからそう遠くないのよね?」

「うん! でも、こっからだと錬金術ギルドよりもっと向こうだよ。あのね、屋台がいっぱい並んでるとこをもうちょこっと行ったとこにあるんだ」

 錬金術ギルドって、いろんなお店屋さんがあるとこの近くでしょ?

 でも僕んちはそれよりも街の真ん中に近いから、もうちょっと先まで行かないとダメなんだよね。

 だからその事をお母さんに教えてあげたんだけど、

「屋台街のすぐ向こうって事は、まさか商業地区の中にあるって言うのか?」

「うん。商業地区ってのの端っこにあるお家だよってバーリマンさんが言ってた!」

 そしたら御者台に座ってるお父さんが商業地区ってのの端っこなの? って聞いてきたもんだから、僕はそうだよって答えたんだ。

「なるほど。司祭様から家を買うための資金をルディーンの預金から出す許可が欲しいと言われた時は相場よりもかなり高いと思ったが、だからなのか」

「そうね。私もそんな場所の値段がいくらかなんて知らないけど、普通の住人が住んでいる地域よりも高いのは当然でしょうからね」

 お父さんとお母さんはね、イーノックカウでお家を買うのにどれくらいのお金がいるのか知ってるんだって。

 だから僕のお家を買う時にどれくらいお金がいるのかを聞いた時は、何かすっごく高いなぁって思ったそうなんだよ。

「あの時は司祭様が今のイーノックカウは土地不足で、これより安い所だと治安が悪い所しか残っていないと聞かされたんだよなぁ」

「ええ。それにルディーンがその理由を教えてくれたから、納得したのよね」

「領主様が他のとこでおいしいお店をやってた人をいっぱい連れてきから、空いてるお家な無くなっちゃったって言ってたよ」

 ちょっと前まではイーノックカウの中にも、もっと空いてるお家があったんだって。

 でも今は他の街から人がいっぱい来ちゃったもんだから、いい所は全部買われちゃったんだよってロルフさんたちが言ってたんだよね。

「そのせいで治安がいい場所が商業地区しか残ってなかったというのなら、多少高くてもそこを紹介してもらえたのはありがたかったな」

 僕が買ったお家って、バーリマンさんが持ってたとこでしょ?

 だから買う事ができたけど、普通だったら商業地域ってとこのお家は欲しくっても買えないんだって。

「住みやすい所から埋まっていくのは当たり前だからなぁ。ギルドマスターの紹介が無ければ、どんな所を買わされたのやら」

「そうね。お金があるのなら治安が悪い場所を買うより、多少高くても安全な場所の方がいいもの。売ってくれた錬金術ギルドのギルドマスターには感謝しかないわ」

 お母さんはね、今度バーリマンさんに会ったらお礼を言わなくっちゃねって言いながら、僕の頭をなでたんだよ。


 それからしばらくして、僕たちが乗ってる馬車は賑やかな屋台街の中を通り越して、僕んちの近くまで行ったんだ。

「あっ! お母さん、僕んちが見えて来たよ」

 こっからだと他のお家が邪魔だから僕んちはまだ見えないんだけど、僕んちを囲んでる壁はこっからでも見えてるんだよ。

 だから僕、お母さんにあそこが僕んちなんだよって教えてあげたんだ。

「あそこって、あの塀があるところ?」

「うん。あの奥にね、僕んちがあるんだ」

「そう。あの向こうにルディーンの買った家があるのね」

 お母さんはね、あの壁があるとこは僕んちじゃなくって、その向こうっ側に僕んちがあるんだって思ってみたいなんだよ。

 だからその壁に近づいてった時に、こんな事を言ったんだ。

「へぇ。ルディーンの買った家のすぐそばに、こんな大きな館があるのね」

「ほんとだ! すっごくおっきなお家がある」

 そしたらね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんも何でか知らないけど僕んちを見てそんなこと言ったんだよ。

 だから僕、お母さんとお姉ちゃんに違うよって。

「違うって、あれは館じゃないの?  ああ、そうか。ここは商業地区だというのを忘れていたわ。あれは誰かの館ではなく、大きな商会の持ち物なのね」

「だから、違うよ。あれが僕んちなんだってば」

「えっ!?」

 僕があのお家が僕んちなんだよって教えてあげたらね、お母さんは何でか知らないけどすっごくびっくりしたおかおになっちゃったんだよ。

 それにね、

「おい、ルディーン。流石にその上段は笑えないぞ」

 お父さんまで馬車を止めてそんなこと言うんだもん。

 だから僕、ほんとだよってお父さんに言ったんだ。

「うそじゃないもん! あっ、ストーさんがいる! ほら、お父さん。ストールさんに聞いてみたらいいよ。そしたらほんとにここが僕んちだって解るから」

 お家の入口のとこを見たらね、そこにストールさんが立ってたんだ。

 だから僕、お父さんたちにその事を教えてあげると二人ともゆっくりとそっちの方を見たんだよ。

「ストールさん?」

「ああ、あれは確かロルフって言う爺さんの所のメイドさんだな。という事は、本当にここがルディーンが買ったという家なのか?」

「もう! だからそうだっていってるじゃないか!」

 ストールさんを見て、お父さんもお母さんもやっとここがほんとに僕んちだって解ったみたい。

 そしたらね、さっきまで黙ってたお兄ちゃんやお姉ちゃんたちが急に大騒ぎしだしたんだ。

「ルディーン。なんだこれ、いくら何でもデカすぎだろ」

「そうよね。うちの畑より広いじゃない」

「それに、窓がいっぱいあるよ。どれくらいのお部屋があるのかなぁ?」

「それに見てよ。奥にメイドや執事っぽい格好した人がいっぱいいる。もしかして、あれもルディーンが雇ってるとか?」

 お兄ちゃんやお姉ちゃんがこんな風に大騒ぎを始めちゃったもんだからね、まだちょっと遠くにいたのにストールさんが気が付いてこっちに歩いてきたんだよ。

 でね、馬車のとこまで来ると、御者台に座ってたお父さんにペコって頭を下げたんだ。

「いらっしゃいませ、カールフェルト様。お待ちしておりました」

「えっ? ああ、どうも」

 急にストールさんに挨拶されたもんだから、お父さんはちょっとぼけっとしたお顔でお返事したんだよ。

 そしたらストールさんはそんなお父さんににっこりと微笑んでから、今度は僕の方を見てお帰りなさいしてくれたんだ。

「それにルディーン様も、お帰りなさいませ」

「ストールさん、ただいま!」

 だから僕も元気いっぱいただいまってしたらね、ストールさんはそんな僕にもニッコリした後、お母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんたちにもペコって頭を下げたんだ。

「それにご家族の方々も、長い道中お疲れさまでした。お迎えの準備は整えてございますから、館の中に入ってお寛ぎください」

 これにはみんな、ちょっとびっくり。

 その中でもお母さんは特にびっくりしたみたいで、

「こちらこそ、待っていてもらってありがとうございます。はい。寛がさせて頂きます」

 こんな変なこと言いながら、ぺこぺこって何度もストールさんに頭を下げてたんだ。 



 読んで頂いてありがとうございます。

 家を買ったと聞かされていただけなのに、いざその場に行ってみたら豪邸が建っていたら驚きますよね。

 おまけに入口にはお金持ちの家のメイドさんが待っていたのですから、ハンスお父さんとシーラお母さんが慌ててしまうのも仕方ありません。

 ただ全員がそんな状態だったわけではなく、特にキャリーナ姉ちゃんなんかは早く館の中を探検したくてうずうずしている事でしょう。

 まぁ、その前にストールさんが整えた部屋に通されて、しばらくの間ストールさんとお父さんたちの会話に付き合わされることになるでしょうけど。


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